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冬インテ無配SS【ランロイ】

そういやサイトの方にはどんな文章書いてるかってあんまし載せてなかったなって。
新刊のサンプルとかはしぶ経由で上げてるけどそんだけしかないなって。
なので、1月の冬インテで無料配布したランロイSSをサルベージ。
R指定ではありませんが、R前提で書いてます。

あ、碧の軌跡のバレを含んでますのでご注意下さい。

それでもイイヨって方は続きから。







 

拍手[1回]


medicine or illness ?


 諦めなければいつか《壁》を乗り越えられると信じている。
 《風の剣聖》や《赤の戦鬼》相手にも諦めなかった結果、俺たちはキーアを救い出すことができた。今も、諦めずに帝国への抵抗を続けている。軍から逃げ回り、地下に潜む日々が続いても。クロスベルの未来を勝ち取るまで諦めたりしない。
 今更そこに、迷いも恐れもないと思っていた。


「よ、ロイド。どうした? お前からのお誘いなんて珍しいじゃないか」
 薄暗い通路の向こうから聞き慣れた軽い口調が聞こえてきた。闇に溶けそうな真紅の髪が、微かな光を受けて炎のように揺らめいて見える。相棒兼恋人であるこの男の、強さと熱さを象徴しているように思えて思わず眼を細めた。
「……ランディ」
 静かにその名を呟けば、すぐ逞しい腕に捕らわれた。そんなに長く待っていたわけではないはずなのに、身体は冷えていたのか抱きしめられた温もりが心地いい。
「本当にどうしたよ? こんなジオフロントの隅っこに呼び出してくるなんてよ。確かに最近ちょっとご無沙汰だったし、そんなにお兄さんとあんなことやそんなことしたかったわけか」
 ロイドきゅんも欲求不満だったんだなー、などと言いながらも抱きしめる腕も頭を撫でている手もいたって優しい。きっと、自分が何を思っているかなんて全部お見通しなんだろう。今はその優しさにすがっていたかった。

 ようやくお互いの身体を離して向かい合うと、ふっと柔らかく微笑む端正な顔に少し心拍数が上がった。
「ちったぁ顔色もよくなったみたいだな。さっきまで血の気なかったからなぁ。心配したんだぜ」
「ああ、ごめん。やっぱりランディの腕の中は凄く安心できるよ」
 面と向かってそう告げれば、一瞬驚いたように目を見開いてすぐに嘆息した。こういう反応をしたときに次に来る言葉はだいたい決まっている。

「この天然たらしめ……」

 やっぱり、と心の中で思いながらも、その評価に納得しているわけではない。でもたらす対象が恋人であれば、それはそれでいいんじゃないかと思ったりもしている。とりわけこんな不安な夜には。
「ったく、そんな顔で誘うなっての。こちとら、お前が腰立たなくなったら明日からの任務に支障が出るだろうからってんで、必死に我慢してやってるんだぞ」
 〝任務〟という言葉にピクリと反応したその様子を敏感に察知して、相棒がクスッと笑う。
「やーっぱり、そのことだったか」

 ――任務。クロスベルを占領している帝国軍に対抗している俺たちは、明日大規模な作戦を決行することになっている。陽動役が掻き回した隙に遊撃士が囚われた一般人を保護、警備隊はライフルで高所からの狙撃に当たり、残りの警備隊と警察が補給と増援を叩くというごくありふれた作戦である。問題は、役割分担であった。限られた人員の中から侵入経路と拠点の構造、その他諸々を鑑みた結果、陽動役はただ一人ランディだけが当たることになったのである。非常に危険な役割であることは言うまでもなく、当然反対意見も根強かった。唯一同行できる資格があるのは自分だったが、今回はどうしても別の任務に当たらざるを得なかったのだ。
 各々が自分のできることを最大限やり続けることが、《壁》を乗り越えるために必要なのは明白だ。相棒だからといって常に一緒にいる訳じゃない。別々の任務に就いたことは何度もあるし、お互いの与り知らぬ所で命をかけて戦っていたこともある。ランディの強さは相棒である自分が誰より知っているし、猟兵である過去を完全に振り切った今自らの命を軽んじるような行動はしないとわかっている。如何に危険な任務といえど勝算はあると判断しているからこそ、この大任を受け入れているのだろう。

「珍しいこったな? どんな状況でもポジティブに捉えて道を切り開くお前さんにしちゃ。俺の過去もまるごと受け入れるわ、化物じみた強敵にも至宝相手にも退かなかったようなヤツが、そんな不安になるほど俺は力不足かね?」
「そうは思ってないよ。無傷でってのは無理かもしれないけど、ランディならやり遂げてくれるって信じてる」
 そう、頭ではわかっているはずなのだ。それなのに何がこんなに自分を不安にさせているのかがわからなくて、いてもたってもいられずにランディを呼び出した。
「……なぁ、ロイド。お前のその不安が、捜査官の予感なのかただの杞憂なのか、大事な人を喪うかもしれないっていう漠然とした恐怖なのか、俺にはわからねえ。けどただ一つ言えることは、俺は必ずお前の元に帰ってくるってことだ。生きるのも死ぬのもお前の腕の中って決めてるんでな」
「ぷっ……何だよそれ、恥ずかしい」
「クサい台詞ばっか吐くお前に言われたかねえよ」
 クスクスと笑いながら再び身体を預ければ、優しく包み込まれ宥めるように顔中にキスが降ってくる。
「お前は頭が良すぎるんだよ。全部背負い込みっぱなしじゃ疲れるだろ? たまにはまるっと放り出して頭空っぽにしてみろ」
「やろうと思ってできることじゃないだろ」
 言外に手伝ってくれと滲ませれば、真っ直ぐ見つめてくる瞳の奥の欲が一層強さを増した。
「……ロイドさん、誘ってます? それ、誘ってますよね? お前の任務だって戦闘は避けられないんだし、腰立たなくなったらやべえだろ!? 」
 最後の方は半ば泣き叫ぶように捲し立てる恋人に、失笑を隠せない。恋人はひとたびスイッチが入ってしまったらこちらが気を失うまで突っ走ることがある。こんなことで愛されていると思う自分もどうかと思うが……これが惚れた弱みというヤツか。

「悪いけど、今夜は挿入なしで我慢してくれ。任務を終えて戻ってきたら……」
「戻ってきたら、絶対やるからな。覚悟しとけよ! 泣いても止めてやらねえからな!」
 鼻息荒く主張する恋人に、必ず戻ってくると安心できるならそれでもいい、とキスの合間に囁いた。

 ……あとのことは、よく覚えていない。


 結局の所、ただ恋人に甘えたかっただけなんじゃないかと思ってしまう程度には、この〝作戦〟はうまくいった。それにしても、挿入なしであれほどまで溶かされるとは、さすがランディと言うべきか。
 もちろん、〝任務〟も無事完遂されたことは言うまでもない。張り切りすぎて、敵味方問わず色んな意味で危なかったらしいが。
 そのあと俺自身も、少し命の危機を感じたりもしたけれど。それもまた、共に歩む人生の一ページ。
 



 ――恋は病でもあり、万能薬でもある――
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