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【作品投稿】emancipation【腐・R18】
空の軌跡SC終盤のヨシュケビ小説です。
 
ヨシュケビです。
 
ヨシュア×ケビンです。
 
ラブ要素はありませんが、R18です。
 
以上が許せる方のみ、続きからどうぞ。



拍手[2回]




 ――あのとき、ルフィナ姉さんはこんな気持ちやったんやろか――
 ぼんやりとそんなことを思いながら両手を広げ、襲い来る『現実』を受け入れた。
「ぐ、うっ……うがァッ……!!」
 唸り声を絞り出しながら荒れ狂うその姿は、まさにケダモノと呼んで差し支えないだろう。
 冷静な思考も、豊富な知識も、女装しても通用するような麗しさも……全てかなぐり捨てた醜いケダモノ。
 『コレ』があのヨシュア・ブライトだと、誰が信じられるだろうか。
「うァ、あアアああアアッ!!!」
「……ハッ……なんぼでも、叫んだらええ、よ……」
 部屋に結界を張っておいて正解だった、と心の中で十分前の自分を褒めておく。
 この結界の中なら、どれだけ音を立てても外に漏れることはない。
 壊れそうなほどベッドが軋む音も、絶え間ない粘着質な水音も――全てはこの部屋の中だけの秘密。
 星杯の光の前に曝け出された『呪い』は、精神の深淵にまで施主の凶悪な狂気を根付かせていた。
 抗えないよう彼を縛る、悪魔のごとく歪んだ力。
 その強大な力の流れを性衝動へ誘導して解放させ、微かに呪縛が緩んだ隙にこちらの暗示を滑りこませる。
 理性を粉砕するような、そんな術を難なく行える程度には、この身体は『慣らされている』。
 押さえつけて、内にも外にも楔を深く打ち込んで、快楽とともに直接力を注ぎ込む――そうやって『創られた』のかもしれない。
「ハァ、ハァ……ィヤ、ダ……ァ…………ッ!?」
「大丈夫、大丈夫やで……俺の術は……君を助けるためのものやから、な?」
 もしそうなら、全てを思い出した今の彼にとって、快楽はすなわち恐怖だ。
 だからこそ優しく抱き締めて、その恐怖ごと全てを受け入れてやる。
「んっ……ン、ハ、ァ……」
「そ、うや……ええ子、やね……っ」
 少し緊張が解れたらしい身体が、また次の快楽を求めて動き出した。
 この術は彼が呪縛を打ち破るためのもの。
 彼が彼自身の意思で動けなければ意味がない。
 身が竦むほどの恐怖に襲われても、抗いきれない快楽の波に溺れても、こんな浮気まがいのことをすることになっても。
 全てを覚悟した上で、彼はこうすることを選んだのだから。
 精と共に吐き出される『闇』も垣間見える記憶の欠片も、狂気と淫惑と暴虐に満ちていて、もう吐き気しかしない。
 それでも……この身ひとつが穢れるだけで『目的』が達せられるのならば、どうということはない。
 その過程で、一人の少年を助けることができるのなら……一人の少女の幸せが得られるのなら……これ以上ない成果といえるだろう。
「ちょっ、まっ!? は、あっ……お、れは、感じさせんで……ええって! ……言う、たや……ん!」
 ちょっと考えごとをしている隙に、弱いところを見つけられてしまったらしい。
「ァ、アァ……き、モチ、イイ……」
 術を紡ぐのに支障が出るからと、あれほど言い含めておいたのに……俺を気持ちよくさせた方が自分もイイという本能だけが先行している。
 呪いに立ち向かう強い意志は、『射精すれば呪縛は弱まり、楔を打ち込める』――つまり、『快感を得ること』を強く望むことに繋がってしまったらしい。
 何度か達したことで体内の力の流れも安定してきたのだろう。
 ケダモノのような暴走も収まり、腰の動きも滑らかになって、その的確な刺激には経験を感じさせる。
 調べた限り、彼女にはまだ手を出していないはず……ならば、抱かれたときの経験を流用しているのか、抱く方も『教えられた』のか――いずれにしても、《白面》が外道だということは十二分に理解した。
「ふ、ぅっ……あ、ぐ……っ」
 ともすれば、術を紡ぐ集中力が途切れそうになる。
 それによって後悔するのは彼自身であり、被害を被るのは彼の最も大切な人なのに。
「ホンマ……とんだ、ご奉仕や、……っ……!」
 強烈な力の奔流が――外へ向かおうとする流れと、中に入ろうとする流れが下腹部に集中して、壊されてしまいそうだ。
 だが、壊れるわけにはいかない。
 俺が、俺の『目的』を達するまでは――


 女神の大いなる秘蹟の前で繰り広げられる、反吐が出るような茶番劇。
 それは、まさしく彼が予想した通りの筋書きをなぞっていた。
「彼女を無力化したまえ」
 無慈悲に響くその命令も、全ては『予定通り』――あとは女神に祈るのみ。
「あたしは……信じてるよ……ヨシュアは……あたしが居なくなっても、現実から逃げたりしないって……」
「…………ごめん、ちょっと自信はないかな」
 人形には決して紡げない、『自分の意見』。
 少し情けなく聞こえる答えであったとしても、それを紡げることが彼にとってどれほど素晴らしいことか。
「もう僕は……完全に貴方から自由だ」
 高らかな勝利宣言をしたものの、彼の顔色は明らかに悪い。
 《聖痕》が消えた後遺症だろうが、あの状態では《白面》を相手に戦えないだろう。
「やれやれ……もう一踏ん張りいりそうやね」
 一歩進み出て、目配せを一つ。
 望んだものではないとはいえ、戦い慣れた彼なら自分の身体のことはわかっているだろう。
 こういう事態も含めて、思いつく限りの起こりうる未来は話し合った上で決めた道だ。
「ケビン・グラハム……貴様!」
「皆さん……すんません、ちょっとだけ時間稼いどいてください! すぐ治療しますよって」
「任せて!!」
 仲間たちの力強い声を背中に受けながら、ほんの少しの罪悪感と共に場を離脱する。
 敵の前に仲間を残していくからではなく――彼女たちが命をかけて戦うその脇で、不埒なことになるであろうことに。
「……すい、ません、ケビンさん……!」
 準備もほとんどなしに身体を繋げる。
 痛みがないなどとお世辞にも言えないが、まだ耐えられる……もっと傷ついたことなど、何度もある。
「謝らんで、ええから……はよ、済ませ……」
 気が急くほどに、絶頂は遠ざかるもの。
 一瞬でも早く戻りたいならば、全て割り切ってでも集中するべきだ。
「はい……っ」
「っ……ぐう、ぅ……」
 張り巡らされていた根が消え去って隙間ができたせいで身体が変調を起こしている。
 ならば、その隙間を一時的にでも埋めてしまえばいい。
 彼が意を決して動き始めたのに合わせて、体内で発動させた回復の術を快楽の奔流に乗せて彼の中に送り込む。
 さらにさっきと同じように性衝動を加速させてやれば、回復も早く済むはず。
「あっ、はっ、も、もう……!!」
 急速に高められ、放出されたエネルギー以上に、彼の身体は回復しているはずだ。
「……う、ごける、か……?」
「はっ……はぁっ……はい……僕、戻ります……」
「よし……自分の手で、始末、つけといで……」
 仇敵を打ち砕き、大切な人と共に在るために――その未来を勝ち取るのは自分以外にありはしないのだから。
「はいっ!」
 大きく頷き、力強く駆け出す背中を見送って、その場に倒れ込んだ。
「…………くそ……しんど…………」
 彼の快楽を優先したせいで俺が達してないことも、彼の回復を優先したせいで俺が消耗していることも、まして中出しの後始末などどうでもいい。
 万事うまくいけば、呪縛から解放されてそのまま《白面》と戦うつもりだったものを、『追加治療』が必要になったのは術が不完全だったせいなのか。
 だとすれば間違いなく、あのとき俺が快楽に呑まれかけたせいだ――そんな後悔に似た暗い思考ばかりがグルグルと脳内を巡っている。
 これもまた、彼の闇を受け入れすぎた後遺症だろうか。
「いや……少なくとも、解放されたなら……成功、や……」
 頭を振ってそんな思考を追い出し、ゆっくりと身体を起こした。
 彼が、大切な人を自らの手にかけることは防げた――それだけでも、身体を張った甲斐があった。
 彼はまだ、戻れる――道を照らしてくれる大切な人を得て、これからの生を人として歩んでいける。
 身支度を調え終わるのを待っていたかのように、一層激しい戦闘音が響いた。
 このリベル・アークそのものが鳴動するようなエネルギーを感じる。
「まさか、《環》が……?」
 《白面》が《環》を使ってなにかをしているのならば、それほど追い詰められているというのならば、終幕は近いということだ。
 どうやら、俺も動かなければならないときが来たらしい。
 ――俺の『目的』は、まさにこれからなのだから。
「ホンマ、君、運がいいで……」
 自らの手を眺めながら呟いた言葉に、羨望が含まれていないと言ったら嘘になるかもしれない。
 大切な人がいて、仲間がいて、待っている人がいる。
 俺も、あのとき仲間が居たなら――そんな幻想を抱いてしまいそうになる。
 全ての穢れを一身に背負うこの身に、そんな救いなど望むべくもないというのに。
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